≪不安な夜≫
(まこと) 「あれ、りんちゃんいない。お家かな」
(ナレーション) りんちゃんのお家まで駆けて行った。
(まこと) 「りんちゃん。遊ぼう」
(ナレーション) りんちゃんはお出かけしていて留守。
(まこと) 「なんだよ。面白いお話してあげようと思ったのに」
(ナレーション) 少し淋しくなってきました。
トボトボ帰り道、ルミちゃんがシクシク泣いていました。
(まこと) 「ルミちゃん、どうしたの?」
(ルミ) 「おかあさんにお買いもの頼まれたんだけどお金落としちゃって。おかあさんに叱られる。ずっと、ずっと探したんだけど、どこにもないの。どうしよう」
(まこと) 「大丈夫、ぼくが助けてあげるから心配ないよ。お母さんにも叱られないから」
(ルミ) 「・・・」
(ピカ…キラキラキラ。)
(まこと) 「ほら、失くしたお金。出てきたよ」
(ルミ) 「わーっ、すごい。まことくんありがとう。これで、買い物が出来るわ。本当にありがとう」
(ナレーション) ルミちゃんは走って買い物に出かけました。
その晩、ルミちゃんのお母さんが訪ねてきました。
(まこと) 「きっと、ありがとうって言いにきてくれたんだ」
(ナレーション) まことくんは思いました。
ところが、ルミちゃんのお母さんは
(ルミ母) 「まことくん、ルミにお金を貸してくれてありがとう。でも、どうしてこんなお金をもっていたの?」
(まこと) 「えっ!ルミちゃんお金を・・・」
(ルミ母) 「ルミったらそそっかしいから机の上に置いてあるお金持っていくの忘れたの。聞いたらまことくんに貸してもらったって言うから」
(まこと母) 「わざわざありがとう」
(ナレーション) まことくんのお母さんは不思議そうに。
少し経って、
(まこと母) 「まこと、まことお金なんて持ってないよね。どうしてその時持ってたの?」
(まこと) 「・・・」
(まこと母) 「ねえ、どうして?お友達の困っている時は助けてあげないことはいけないけれど、今日の事はお母さんいい事をしたとは思えないけどね」
(ナレーション) まことくんは心の中で
(まこと) 「ルミちゃんもあの時喜んでくれたのに。いい事をしてどうして僕が叱られるの」
(まこと) 「ごめんなさい」
(まこと母) 「お金は誰に借りたの」
(ナレーション) とっさに嘘をついた。
(まこと) 「りっ、りんちゃんのお母さんに」
(まこと母) 「そう、ちゃんとお話してくれないと、おかあさんも困るわ。また、お礼に伺うから明日、このお金返しておいで」
(まこと) 「うん、わかった」
(ナレーション) 夜ベットの中でまことくんはいろいろ考えた。
魔法の杖で欲しいものを出してあげた事。
いい事をして怒られた事。
明日りんちゃんにお金の嘘をどうお話しようかとか。
それよりも、りんちゃんどこにお出かけしていたんだろう。
どうして居なかったんだろう。
誰と遊んでいたんだろう。
大きなため息をひとつ。
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