約束ごと 6

≪約束ごと


(ナレーション) 何日かして、


(ただし) 「まこと、まこと」


(ナレーション) 外でただしくんが呼んでいました。


(まこと) 「どうしたの?」


(ただし) 「まさるがどうしても欲しいものがあるから出してあげて欲しいんだ」


(ナレーション) 昨日りんちゃんに褒められたまことくんは、


(まこと) 「いいよー。すぐ行く」


(ナレーション) 大慌てで階段を駆け下りました。


(ただし) 「まことは何でも出せるんだよ。凄いだろう」


(まさる) 「えー何でも?」


(まこと) 「まさるくんは何が欲しいの?」


(まさる) 「あのね、サッカーボールが欲しいんだ。お母さんが買ってくれないから」


(まこと) 「なーんだ。サッカーボールか、いいよ」


(ナレーション) これで、またりんちゃんに褒めてもらえる。


(ピカ…キラキラキラ)


(ナレーション) まさるくんの足元にまっさらのサッカーボールがコロリ。まさるくんは大喜びでニコニコそれを見ていたただしくんもニコニコ。

まことくんは得意そうに


(まこと) 「こんなのでいいの?」


(まさる) 「欲しかったボールだよこれ。ありがとう。今度一緒にサッカーしようね」


(ナレーション) まことくんはとっても偉くなったような気になっていました。


(ただし) 「おい、まこと。今日はおれにバットを出してくれよ。」


(まこと) 「えっ、ただしくんには釣り竿出してあげたじゃないの」


(ただし) 「いいだろう!まこととは親友なんだし」


(ナレーション) まことくんはすごく嬉しくなりました。ただしくんが親友になってくれた。


(まこと) 「うん、ただしくんとは親友だから出してあげる」


(ピカ…キラキラキラ)


(ナレーション) ただし君の手に金属バットが。


(ただし) 「おーーー、すごい。金属バットだ。ありがとうまこと」


(ナレーション) 次の朝も


(ただし) 「まこと、まこと」


(ナレーション) ただしくんの声が。釣りを教えてくれるのかも、野球の誘いかな。


(まこと) 「どうしたの?」


(ただし) 「今日はさー、グローブ2つと、野球ボールを3個出してくれ。それとおれの兄ちゃんがプラモデルを出してほしいって」


(まこと) 「ただしくん、そんなの無理だよ」


(ただし) 「おい、俺達親友だろ。まことも一緒に野球するだろ、それに兄ちゃんにまことのこと自慢したら「いい友達だな」って言ってさー、「友達の兄ちゃんだから出してくれるかな」って頼まれたんだ。頼むから」


(ナレーション) どんどんりんちゃんの言っていたみんなを幸せにすること、と違うようになっていることは分かっていました。でもまことくんは断ることが出来なくなっていました。


(まこと) 「うん、じゃあいいよ。でも、ただしくんこれで最後ね」


(ただし) 「わかった、わかった」


(ピカ…キラキラキラ)


(ナレーション) ただしくんの周りにグローブ2つ、ボール3個、お兄ちゃんのプラモデルがポンポンポンっと。


(ただし) 「まことありがとう、今日はまさる達と野球する約束だから、また今度な」


(ナレーション) 嬉しそうに新しいグローブをはめながらただしくんは帰って行った。


(まこと) 「なんか、嬉しくないなぁ、みんなを幸せにしてあげているのに」

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