≪けんか≫
(ナレーション) トボトボと大きな木の丘へ向かいました。
(まこと) 「あっ、りんちゃんだー」
(まこと) 「りんちゃーーーーん」
(りん) 「あっ、まことくん。最近どうしていたの?ここにもなかなか来ないし、りん…まことくんに嫌われるようなことしたのかなって心配していたの」
(まこと) 「みんなを幸せにするのが忙しくて」
(りん) 「わーー、すごい。みんなニコニコで幸せになって喜んでいるの?」
(まこと) 「う、うん」
(りん) 「すごいねー、やっぱりまことくんはすごいね」
(ナレーション) りんちゃんに褒められると嬉しいはずなのになんだかだんだんイライラしてくる。
(まこと) 「何がすごいんだよー、みんな欲しいものを出してあげたら幸せになるに決まっている。そんなこともりんちゃんは知らないの」
(りん) 「欲しいもの?」
(まこと) 「ただしくんにはバット、グローブ2つ、ボール3個、それに、それに、ただし君とは親友だからいいだろ。りんちゃんには関係ない」
(ナレーション) わかっているのです。りんちゃんの言っていた事と違う事も、断れなくなっていることも、間違っている事は全部わかっているのです。
(りん) 「まことくん、まことくんがそれでいいならりんはいいよ。」
(まこと) 「なんだよ、りんちゃんは前もそう言ってたけど、何もわかってないんだ。ぼくがみんなを幸せにするの大変なんだからな」
(りん) 「ごめんね、ごめんね」
(ナレーション) まことくんは初めてりんちゃんの涙を見ました。一番ニコニコの幸せいっぱいで居てほしかったりんちゃんが泣いている。
(まこと) 「どうしよう。でもりんちゃんが悪いんだ」
(まこと) 「もういい。りんちゃんなんか大嫌い」
(ナレーション) まことくんは立ち去りました。
それから、まことくんは何をしてもおもしろくない。ニコニコ笑顔も消えていました。
ある日、大きな木の丘にみんな集まっている。その中にまことくんが。
(まこと) 「じゃー順番ね。ひとり1つだよ」
(ナレーション) 得意そうにまことくんが大きく叫んだ。
(みどり) 「わたし、お人形が欲しいの」
(まさる) 「ぼくは、ハーモニカ」
(ルミ) 「その次、わたし」
(ときお) 「僕の方が先」
(ナレーション) りんちゃんはびっくりしました。
初めてまことくんが言っていた欲しいものの意味がわかりました。ただ、ただ悲しくて、悲しくて。大きな涙がポロポロ。
(まこと) 「なんだよ、また泣いているの、メソメソりんちゃんだ。ぼくはみんなを幸せにするのが忙しいからりんちゃんとは遊べないから。もし何か欲しいものがあれば後ろに並んで」
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